図 1 に示した閉曲面. 自己交差は便宜的なもので,本当はあってはいけない. 尿瓶を思わせる形をしているが, 中に入れたつもりの水がいつのまにか表に流れ出てしまう構造になっている. 射影平面と並んで,向き付け不可能な閉曲面の代表選手である.
図1. クラインの壷
このクラインの壷は次のようにして作ることができる. まず,伸縮自在の長方形を用意する. その上端と下端を貼り付けて円柱を作る. 円柱を曲げで両端の円周を素直に一致させれば, いわゆる{\bf トーラス}になってしまう. そこで, 一方の円周をひっくり返してもう一方の円周に重ねる.
とはいえ,最後の操作はこの世では実行できない. それを無理にやってしまうと,図にあるような自己交差が生じてしまうのである. 実は, 4 次元空間の中でこの操作を行えば, 自己交差を作ることなく,クラインの壷を作ることができるのである.