量子力学と並んで, 20 世紀の物理学を支える基礎理論の 1 つ. アインシュタインによって創設された. 慣性系のみを対象とする「特殊相対性理論」と 重力による宇宙空間の歪みを扱う「一般相対性理論」とがある. いずれも「光速不変」を原理として展開された理論で, 高速移動すると時間の進みが遅くなることや, ブラック・ホールの存在など, 宇宙で起こる不思議な現象が示されている. そのため,啓蒙書などで,それを知った者たちは, 誰でも一度は相対性理論の虜になってしまうだろう.
かくいう私もその 1 人だった. しかし,この相対性理論の虜になっているかぎり, 専門家たちが教えてくれる事実を鵜呑みにして 喜んでいるしかないと,私は思うようになった. 子供の頃に夢を抱いていた宇宙はもっと自由だったはずだ. 誰かの入れ知恵を口にしているだけではつまらない….
そう思った私は,大学に進学し,数学を専攻した. 大学院では, 現在の専門である位相幾何学的グラフ理論と並行して, 本間龍雄先生から 3 次元多様体論を学び, 宇宙の形を直観することの喜びを知ることになった.
その喜びをみなさんにも味わってもらおうと, 『トポロジカル宇宙』(日本評論社)という本を書いた. その本のパイロット版に相当する冊子には相対性理論に関する記述もあったが, 数学者である私の責任ですることではないと判断して, その本の中では相対性理論に関する記述を排除した. 例えば,「ブラック・ホール」という言葉が出てくるが, あくまで比喩的にしか用いていない. 『トポロジカル宇宙』に関しては, 「大航海時代」の項を参照していただきたい.