ある数 a から始めて, それに同じ数 r を掛けていって得られる数列
を等比数列という. その n 番目の項は arn-1 と表される. 等比数列の第 1 項から第 n 項までを足したもの
を等比級数という.
高校で数学を勉強すると,上の等比級数の値が次の式で表わされることを習う.
ただし, r ≠ 1 である. r = 1 のときは,その値が na になることは明らかだろう.
この公式の導き方はいろいろとあるが, 本文で示した方法を応用して導いてみよう. ただし,ここでは a = 1 の場合を考える.
一般の場合は, ここで求める公式を単に a 倍するだけである.
まず,全体に r - 1 を掛けて, 1 を先頭に足しておく. 本文では r = 2 だったので, r - 1 を掛けることは意味がなかった. 「先頭とその次を足す」を繰り返していくと, 次のように計算が進んでいく.
この計算では, いつでも先頭が ri + (r-1) × ri という形をしていて, それをまとめて ri+1 ができあがるという構図が続く. これを rn-1 が現れるまで繰り返すと, 最後に rn-1 + (r-1) × rn-1 から rn が生まれて終了.
そこで,初めに施しておいた工夫の補正を行おう. つまり,足した分の 1 を引き,掛けた r - 1 で割る. これで,
が示されたことになる.
この証明方法はおもしろいが, 技巧的だと感じる読者もいるだろう. しかし, r 進法による数の表し方の原理がわかっていると, それが極めて素直なアイディアであることがわかるはずだ. 例えば, r = 10 のときを考えてみるとよい. 11111 の値を求めるのに, 9 を掛けて 99999 を作り, それに 1 を足す. すると,次々とくり上がり起こって 100000 になる. これをもとに戻すために, 100000 から 1 を引き, 9 で割る.