グラフの辺の縮約と除去に関する漸化式によって,
グラフの多項式不変量が定義できる.
それがいわゆる根上多項式である.
その多項式から引き出せるグラフの情報や
分解公式,双対多項式,拡大根上多項式,閉曲面上のグラフの埋め込みの不変量
となる多項式などの研究[論文17, 35, 36, 37]を展開し,
多くの研究者の関心を集めた.
特に,拡大根上多項式からグラフの次数列を読み切る手法は極めて巧妙である.
根上多項式は従来から知られていた
染色多項式や流れ多項式などのグラフの多項式を内包する多項式で,
ある意味ではマトロイドの不変量であるTutte多項式と対等だと言われているが,
その定式化が素直で簡潔であることが評価されている.
また,結び目理論において盛んに研究されているJones多項式なども,
結び目から導かれるある種の平面グラフの多項式不変量とみなすことができるので,
根上多項式との関連も深い.
川越賢一氏(現在,金沢大学助手)は博士論文の中で,状態モデルと呼ばれる手法によって根上多項式を再定義するという試みをしている.そのアイディアを拡張することで,拡大根上多項式が生まれた.
●おわり● [1998/5/10]