第三の理/補足●
数学者

 もちろん,数学を研究する学者のことである. しかし,世間的には,大学で数学を教えている先生と 等価に扱われているような気もする. 大学の数学の先生の中にも研究に対する興味を失った人もいるし, 大学関係者でなくても熱心に数学を研究している人もいる. したがって,社会的な身分よりも, 数学の研究能力の有無によって,数学者かいなかを判定するべきだろう.

 これは私の私見であるが, 数学者には次の 4 タイプがいる.

・ 理論を作る人
新しい数学的概念や研究の枠組みを作ることを得意とする. 「××理論」と名の付く理論を作るのであって, その理論を使う人はこのタイプには含めない.
・ 問題を解く人
独特の着想や鍛え上げられた技能によって, 与えられた問題を見事に解いてしまう切れ者. たくさん練習問題をこなして喜んでいる 受験生とはレベルが違うぞ.
・ 現象を発見する人
通常の理論が見落としがちな現象を発見し, 人が驚くような定理を証明するのが得意. 問題作りの名人と考えてもよい.
・ 数学を使う人
数学を応用して,具体的な事象を分析する. 数学的なモデルを立て, 既知の数学を利用するのがうまい.

 理論を作る人が最も偉いと思っている人も少なくないが, 問題を解く人や現象を発見する人も重要である. いくら大理論を追求していても, 具体的な問題も解けず,おもしろい現象を知らない人たちも少なくない. 要は,能力は人それぞれなのであって, この 4 タイプに優劣をつけることはナンセンスである.

 数学を使う人たちの中には, 海外では“mathematician”と呼んでもらえるのに, 日本では数学者と呼ばれないと嘆いている人がいる. しかし,日本には算数と数学という 2 つの言葉があるように, 数学と“mathematics”とは完全に一致した概念ではないようだ. その日本固有の語感からすると, 私自身も第 4 タイプを数学者とは認定したくない. 彼らは数学者とは別の人種なのだと思えばよいだけのことなのに, 「数学者ではない」と言われると, 卑下されているように聞こえてしまう人もいる. これは悲しい….

 ちなみに,私自身は現象を発見する人です. 理論を作る人は少数しか存在が許されないでしょう. おもしろい現象はいくら発見されても困るものではありません. みなさん,もっと現象発見の数学をしましょう!


negami@edhs.ynu.ac.jp [1998/5/1]