第三の理/補足○
メタ認知能力

 物事のしくみや状況がどうなっているのかを理解する能力が「認知能力」である. そういう認知をしている自分自身を認知する能力が「メタ認知能力」である. つまり,自分自身を相対化して見る能力ということもできる.

 例えば,なまじ数学ができてしまうと, 自分自身がどのように数学を理解しているのかなど関心の外になってしまうだろう. その人個人にとっては何の不都合もないのだが, そういうメタ認知能力の欠けた人間が教育を語ってしまうと, ろくなことにはならない. 単に学生のできの悪さを嘆くばかりで, 教育を改善する方法など思い浮かびはしないだろう. 自分自身が見えない者に,他人を理解できるわけがない.

 というわけで,私は,数学にかぎらず, それぞれの専門分野で活躍する人たちのメタ認知能力を喚起したい. どの分野にも専門性を追求することで獲得できる独自の認知能力があるはずだ. それはどのようなものなのか. 専門家が自らを相対化して, 自分自身の認知のしくみを口にしてほしい. その声を集めて,単なる認知科学者だけでは達成不可能な 「ハイパー認知科学」を創設したいと私は思っている….


negami@edhs.ynu.ac.jp [1998/5/1]